起業した当初は、記帳が行え、税務申告が滞りなく行えれば大きな問題はありません。ここで、注意すべきは起業するときにどのような仕組みで会社を設立するか。取締役会は必要か。取締役は何人必要か。監査役は必要か。といった機関設計をいかにするべきかという選択です。これには、創業者が会社をどのように展開して行きたいのかということと、それを実施していく上での必要な人的ネットワークをどう組み込むかということが大きなポイントとなります。
会社が売上を計上し、企業規模が徐々に拡大すると、利益が生じ、税金を払わねばなりません。この税金の支出を最小に抑えること、すなわち節税となるよう注意しなければなりません。さらに製造能力の拡大や売上の増加から設備投資や営業資金の資金繰りの必要性が生じ、銀行等からの資金調達を行う場合があります。この資金調達を円滑すすめるにもスキルがあります。また、銀行では通常、お金を貸すだけですので、後には返さなくてはなりません。そのため、返す必要のないお金を資本金としてベンチャーキャピタル等に求める場合があります。この場合はお金を返さなくていい反面、会社はもはや創業者だけのものではありません。そのため、資本政策が重要になります。いくら調達するか。株価はいくらか。議決権はどうするか。何株、誰に発行するか。ストックオプションも当然に考慮します。この場合、創業者が将来的にも安定的に経営を行えることを踏まえたものとなります。こうした資本政策と資金調達は1セットで、会社の特長、技術優位性、成長可能性を考慮した事業計画が極めて重要となります。ベンチャーキャピタル等の外部資本が入ることにより、株主総会や第三者割当増資等の手続きを適切に実施するための会社法の知識も要求されます。また、適切な経営判断を行うため、月次決算や管理会計の導入も当然に必要となってきます。
更に会社規模拡大してくると、子会社を設立したり、LLP・LLCの設立を検討したりします。また、株式公開に備えて、内部管理体制を充実させ、規程類を整備し、業務フローチャートを作成し、利益相反取引を整理し、公開審査や会計監査に耐えうるものとしなければなりません。公開後には更なる組織再編としての合併や他社の買収といったM&Aの実施や公開市場における金融商品取引法上の厳密なルールの遵守、株式を高水準で維持するためのIR活動や買収防衛手段を含めたリスクマネジメントも要求されます。
このように会社は成長するにつれ、必要となる経理財務のスキルが変化しますので、会計事務所選びのポイントの一つになると思います。 |